画像出典:丸美屋食品工業株式会社 プレスリリース(ATPRESS)
1. フック:売れた事実
丸美屋食品工業の「麻婆豆腐の素」は1971年の発売から2026年で55周年を迎え、記念パッケージで展開されている。麻婆豆腐の素市場でトップシェアを持つ丸美屋は、定番の〈中辛〉〈甘口〉〈辛口〉に加え、プレミアムライン「贅を味わう麻婆豆腐の素」(辛口・中辛)、期間限定の「粗挽き肉たっぷり麻婆豆腐の素」「黄金の麻婆豆腐の素」「魚粉香る濃厚魚介麻婆豆腐の素」など、幅広いラインナップを継続的に展開している。コンビニ(セブン-イレブン等)から通販(ヨドバシ、マツキヨココカラオンライン、丸美屋公式通販)まで、購入チャネルも幅広い。
2. 背景と狙い
丸美屋は麻婆豆腐の素を「子どもから大人まで満足できる」ことを軸に、辛さのバリエーションを充実させてきた。甘口・中辛・辛口という定番3段階の辛さ選択は、辛いものが苦手な子どもから、しっかり辛さを求める大人まで、家族の中で好みが分かれても同じブランドの中で解決できる設計になっている。
さらに、通常品より豆板醤を3種類使い、花椒や唐辛子を高温抽出した油、豆チ・甜麺醤を加えたプレミアムライン「贅を味わう麻婆豆腐の素」を展開することで、消費者の多様化するニーズ(普段使いと特別な日の使い分け)に応えている。丸美屋自身、「消費者の多様化するニーズに応えるため」とプレミアムライン発売の狙いを説明している。
3. トレードマーケティング視点の分解
流通
メーカー視点:コンビニ・スーパーの定番商品棚に加え、通販(丸美屋公式通販、ヨドバシ、マツキヨココカラオンライン等)でも幅広く展開している。
小売視点:55年続くロングセラーブランドであるため、小売にとっては安定した回転が見込める定番商材として、棚の一定面積を安心して確保できる商品だったと考えられる。
価格
メーカー視点:定番品は手頃な価格帯を維持しつつ、プレミアムライン「贅を味わう」はより高い価格帯に設定されていると見られる。
小売視点:定番品とプレミアム品の価格帯の違いは、小売にとって普段使いの安定需要と、特別な日のごちそう需要という異なる購買シーンの両方を1つの売場でカバーできるメリットがあったと考えられる(実際の価格差・粗利率は非公開のため、一般的なプレミアムライン設計からの仮説にとどまる)。
棚割り
メーカー視点:定番3辛さ・プレミアムライン・期間限定商品を同時に展開することで、麻婆豆腐の素の棚におけるフェイス数・存在感を最大化していると考えられる。
小売視点:バリエーションの多さは、小売にとって中華調味料棚の中でも麻婆豆腐カテゴリー全体の占有スペースを広げやすいメリットがあったと考えられる。
季節性
メーカー視点:期間限定商品(粗挽き肉、黄金、魚粉香る等)を年間を通じて入れ替えることで、通年で新しい話題を作り続ける展開をしている。
小売視点:期間限定商品の存在は、小売にとって定番棚に定期的な新商品導入のタイミングを作り、売場の鮮度を保てるメリットがあったと考えられる。
プロモーション
認知:オレンジページ等の料理メディアでのレシピ紹介を通じて、アレンジ方法も含めた認知拡大を図っている。
トライアル:定番3辛さは手頃な価格で試しやすく、家庭の定番として新規購入のハードルが低い。
リテンション:55周年記念パッケージや期間限定フレーバーの継続的な投入により、既存ユーザーに「また新しいものを試したい」という動機を作り続けている。
カニバリゼーション
プレミアムライン「贅を味わう麻婆豆腐の素」や期間限定商品は、定番の中辛・辛口の売上の一部を奪っている(純増ではなくシフトさせている)可能性がある。ただし、プレミアムラインは「特別な日のごちそう」という異なる購買シーンを狙っており、普段使いの定番品とは棲み分けができている可能性も高い。これを裏付ける公開データはなく、あくまで推測の域を出ない。
小売にとっての狙い:客数×客単価×購入頻度
55年続く定番ブランドであるため、購入頻度(家庭の定番メニューとしての繰り返し購入)が主要なドライバーと考えられる。プレミアムライン・期間限定商品は客単価(通常品より高い価格帯の選択)を副次的に押し上げる要素になっている。新規の客数獲得については、既に高いブランド認知があるため、他商品ほど大きな伸びしろがあるわけではないと考えられる。
4. ショッパーマーケティング視点の分解
パッケージ
定番3辛さはパッケージの色分け(甘口・中辛・辛口を判別しやすい配色)で、売場での選びやすさを重視した設計になっている。2026年は発売55周年の記念パッケージで展開されている。
購買トリガー
「家族の中で辛さの好みが分かれても、同じブランドの中で選べる」という安心感が、購買トリガーとして機能していると考えられる。期間限定商品は、定番の味に飽きた既存ユーザーに新しい選択肢を提示するトリガーになっている。
体験設計
「簡単アレンジでラクラクおいしい」という料理メディアでの紹介にもあるように、短時間で本格的な中華の味を再現できる手軽さが、リピート購入につながる体験設計になっている。
ターゲットとなった性年代層
実購入者データ(性年代別)は非公開のため断定はできないが、55年という長い歴史と「子どもから大人まで」という辛さ設計の思想から、コア層は子育て世帯・ファミリー層だったと考えられる。プレミアムライン「贅を味わう」の展開からは、拡大層として、本格的な中華の味を求める単身・カップル世帯にも広がっているとみられる。
カテゴリ視点の指標分解
55年続く定番ブランドであるため、「購入頻度」(家庭の定番メニューとしての繰り返し購入)が主要な指標だと考えられる。プレミアムライン・期間限定商品は平均単価の押し上げに寄与していると考えられる。カテゴリ購入率自体は既に高い水準にあると見られ、新規開拓の余地は相対的に小さいと考えられる。
5. 実際の結果
麻婆豆腐の素市場でのトップシェアを維持し続け、55周年という節目を迎えてもなお定番3辛さ・プレミアムライン・期間限定商品という多層的な展開を継続していることから、狙い通りブランドの求心力を保ち続けていると見られる。個社の売上金額は公表されておらず、規模感は店頭・通販の取り扱い状況、トップシェアという公表情報からの推測にとどまる。
6. 購買導線
コンビニ・スーパーでの店頭購入が中心の商品だが、通販でも幅広く取り扱われている。
7. 類似のインサイトから生まれた他商品
「定番の辛さ・甘さバリエーションで間口を広げつつ、上位グレード・期間限定で話題を絶やさない」という多層的なポートフォリオ戦略は、カレールーやレトルトスープなど他の調味料・レトルト食品カテゴリーでも見られる。家族の好みの違いをブランド内の選択肢で吸収し、かつ定番品だけに頼らず新しい話題を作り続けるという組み合わせが、ロングセラーブランドの共通戦略といえる。
8. 法則の一般化
「家庭内で好みが分かれる要素をバリエーションとして吸収しつつ、上位グレードと期間限定で飽きさせない工夫を重ねると、半世紀を超えて定番であり続けられる」——麻婆豆腐の素の成功は、単一の商品を作り続けたのではなく、辛さという軸でのバリエーションと、グレード・季節性という軸での新規性を両立させ続けた点にある。
出典:丸美屋食品工業株式会社 プレスリリース(ATPRESS)、日本食糧新聞、オレンジページnet


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