じゃがりこ×『原神』再コラボレーションはなぜ売れたのか

じゃがりこ辛いやつ×原神コラボパッケージ わさび醤油味(ミカ・ファルカ・アンバー) スナック菓子

画像出典:カルビー株式会社 プレスリリース(PR TIMES)

1. フック:売れた事実

カルビーは2026年6月中旬から、「じゃがりこ細いやつ サラダ」「じゃがりこ辛いやつ 旨辛明太チーズ味/わさび醤油味」を対象に、世界的人気ゲーム『原神』とのコラボレーション第2弾を全国で期間限定発売した。カップ5種×フタ6種のランダムな組み合わせで合計30種類のデザインを展開し、2026年6月20日にはSHIBUYA109渋谷店で「じゃがりこみくじ」によるサンプリングやフォトスポットを設置した店頭イベントも実施されている。初回コラボは2024年3月中旬〜4月下旬に実施され、カップ・フタ合わせて42種類のデザインを展開していた。複数の報道で「初回の好評を受けて」再コラボが実現したと伝えられており、約2年越しで”満を持して”の再投入となった。

2. 背景と狙い

じゃがりこは1995年発売のロングセラーブランドで、単体では新規の話題を作りにくい定番商品である。カルビーはこれまでも企業・キャラクターとの多数のコラボレーションを展開してきたブランドだが、その中でも原神との再コラボは「一度きりで終わらせず、同じ相手と間隔を置いて再投入した」という点で異質だ。原神は世界的に人気の高いゲームIPであり、そのファン層はコンビニ利用者全般を主要顧客とするじゃがりこの既存顧客層とは重ならない部分が大きい。カルビー側の狙いは、初回コラボで実証された「原神ファンの熱量」を再び活用し、新商品開発を伴わない低コストな企画(パッケージ変更のみ)で、確実に話題化できる再現性の高い施策を回すことにあったと考えられる。

3. トレードマーケティング視点の分解

メーカー(カルビー)と小売それぞれの立場から見ると、同じ企画でも得ているメリットが異なる。

流通

メーカー視点:「じゃがりこ細いやつ サラダ」はコンビニエンスストア限定、「じゃがりこ辛いやつ」は全業態で展開するという使い分けにより、幅広い店舗への配荷を実現している。

小売視点:コラボパッケージは通常品と同じ棚割りスペースに置くだけで話題性を獲得でき、追加コストをかけずに商品の回転率・視認性を上げられる

価格

メーカー視点:価格は通常の「じゃがりこ細いやつ」「じゃがりこ辛いやつ」と同一帯に据え置かれており、コラボによるプレミアム価格の上乗せは確認できない。パッケージ変更のみで話題性を作る企画のため、原価上昇分を価格転嫁する必要がなかったと考えられる。

小売視点:単価を上げずに客数・購入頻度を増やす設計であり、通常品と同水準の粗利率のまま販売数量の増加が見込める点が、小売にとっての採用しやすさにつながっていると考えられる(実際の卸条件は非公開のため、あくまで一般的な業界慣行からの仮説にとどまる)。

棚割り

定番棚の中にコラボパッケージが混在する形で展開され、「どのデザインが当たるか分からない」というランダム性が、陳列時の視認性と手に取りやすさを高めている。

季節性

2026年6月中旬〜7月下旬という、夏休みシーズン突入直前のタイミングでの発売である。原神側のゲーム内イベントカレンダーとの連動可能性も考えられるが、公開情報からは断定できない。学生層を含むファン層が長期休暇に入る前に話題を作る狙いがあったと推測される。

プロモーション

SHIBUYA109渋谷店での店頭イベントは、認知・トライアル・リテンションの3段階で整理できる。認知:フォトスポットの設置により、来店者のSNS投稿を誘発する仕掛けトライアル:「じゃがりこみくじ」によるサンプリング配布で、購入前に商品を体験できる機会を提供。リテンションカップ5種×フタ6種のランダム組み合わせという設計自体が、好きなキャラクターの組み合わせを求めて複数回購入させる、コンプリート型の継続購買を誘発する仕組みになっている。

カニバリゼーション

コラボ対象商品(じゃがりこ細いやつ・辛いやつ)が、定番のじゃがりこ(サラダ味等)の購入をどの程度代替したかは公開情報からは検証できない。期間限定・数量限定という性質上、「話題のコラボを一度」という消費文脈が強く働き、定番ラインとの共食いは限定的だった可能性がある

小売にとっての狙い:客数×客単価×購入頻度

売上を客数×客単価×購入頻度に分解すると、本企画が主に狙ったのは客数(原神ファンの新規来店)と購入頻度(デザインコンプリートを目指した複数回購入)の2つだと考えられる。価格が通常品と同水準であるため、客単価への直接的な押し上げ効果は限定的である。

図:売上ドライバー(客数×客単価×購入頻度)のうち、本企画が主に効くと考えられる要素(当サイト作成)
客数 主要ドライバー (原神ファンの新規来店) 客単価 副次的効果にとどまる (価格は通常品と同水準) 購入頻度 主要ドライバー (デザインコンプリート狙いの複数回購入)

4. ショッパーマーケティング視点の分解

パッケージ

原神の人気キャラクター(ジン・ファルカ・アンバー・ミカ・バーバラ・パイモン等)をあしらったデザイン。カップとフタの組み合わせがランダムであるため、「どのキャラクターが当たるか」というガチャ的な要素がパッケージ自体に組み込まれている

購買トリガー

「好きなキャラクターが当たるかもしれない」という期待感が、通常のじゃがりこ購入とは異なる購買動機になっている。原神ファンにとっては、じゃがりこ自体への関心よりもキャラクターグッズとしての価値が購買の起点になっていると考えられる。

体験設計

「引いたキャラクター」をSNSに投稿する文化は、ソーシャルゲームのファンコミュニティで自然発生しやすい行動様式である。店頭イベントのフォトスポットも、この投稿行動を後押しする設計になっている。

ターゲットとなった性年代層

実際の購入者データ(性年代別)は公表されていないため、以下は推測である。火付け役となったコア層は、原神のコアファン層(10代後半〜30代、性別を問わずゲーム好き層)だと考えられる。じゃがりこ自体の既存顧客層(幅広い年代のコンビニ利用者)とは重ならない部分もあり、コラボによって従来リーチできていなかった層を開拓する狙いがあったとみられる。

カテゴリ視点の指標分解

カテゴリ(スナック菓子)の売上は、カテゴリ購入率(浸透率)×購入者あたり購入金額に分解でき、購入者あたり購入金額はさらに購入者あたり購入数量×平均単価に、購入者あたり購入数量は購入頻度×1購入あたり購入数量に分解できる。本企画で特に効くと考えられるのは、カテゴリ購入率(原神ファンという新規層の一時的な購入)と購入頻度(コンプリート目的の複数回購入)である。平均単価は通常品と同一のため、購入者あたり購入金額への影響は主に購入数量の増加によるものと考えられる。

図:カテゴリ指標の分解ツリー。赤色=本企画で特に押し上げ効果があると考えられる指標(当サイト作成)
× × × カテゴリ(スナック菓子)の売上 カテゴリ購入率 購入者あたり購入金額 購入者あたり購入数量 平均単価 購入頻度 1購入あたり購入数量

5. 実際の結果

初回コラボ(2024年3月〜4月)の”好評”を受けて、約2年越しで第2弾が実現したこと自体が、企業側が初回の成果を成功と判断した証左と見てよいだろう。第2弾ではデザイン数を42種類から30種類にやや絞り込んでいるが、これがコンプリートのハードルを下げる意図的な調整なのか、対象商品ラインの違いによる結果なのかは、公開情報からは断定できない。具体的な販売数量・売上金額は公表されていない。

6. 購買導線

本コラボ商品はコンビニエンスストア・スーパー限定の期間限定販売のため、調査時点で楽天市場・Amazon等の公式通販チャネルは確認できなかった。通常パッケージの「じゃがりこ細いやつ」「じゃがりこ辛いやつ」であれば通販で入手できる場合があるが、原神コラボデザイン自体の入手は店頭に限られる

7. 類似のインサイトから生まれた他商品

じゃがりこブランドは、青いじゃがりこのように「一度成功した企画を、間隔を置いて再投入する」というパターンを繰り返し用いている。また、2025年7月には人気キャラクター「ちいかわ」ともコラボレーションしており(じゃがりこ細いやつ サラダ、カップ6種・フタ12種)、じゃがりこは”共創(コラボ)”そのものを軸にした話題創出を継続的な戦略として採用しているブランドだと言える。

企画仕掛け共通するインサイト
じゃがりこ×原神(第1弾・第2弾)同じIPと約2年の間隔を置いて再コラボ一度証明された需要を、時間を置いて再び刈り取る「勝ちパターンの再現」
じゃがりこ×ちいかわ(2025年7月)人気キャラクターとのコラボパッケージ定番ブランドの認知度とIPのファン熱量を掛け合わせ、新規層を開拓する

8. 法則の一般化

一度成功したコラボ企画は、単発で終わらせず「勝ちパターン」として時間を置いて再投入することで、新規開発コストを抑えながら再現性高く話題を作れる。特に熱量の高いファンダムを持つIPとの再コラボは、初回で証明された需要を再び刈り取れる、比較的低リスクな施策になりうる。


出典:カルビー株式会社 プレスリリース(PR TIMES)じゃがりこ公式サイト/日本経済新聞/でんふぁみこがめる/キャラホビ 等の報道をもとに作成


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